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三木孝浩

【三木孝浩監督インタビュー】監督作品『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』Netflixにて世界独占配信中!

三木孝浩監督の最新作品はSNSを中心に話題を呼んだ森田碧氏のベストセラー小説「余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話」の映画化。今を大切に生きようとする男女が織りなす期限付きの恋を描いたラブストーリーを描く本作について三木監督に聞いた。

 

■『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』でタッグを組まれている吉田智子さんが本作の脚本を担当されておりますが、台本を読まれた感想を教えてください。

最初に原作を読んだとき、キャラクターの純粋さに絆された部分があって、余命ものではあるんですけど、まっすぐな命の話で2人の関係性が眩しく感じたので、映画の中でも観ている人が“可哀想”ではなくてこの眩しさを羨ましいと思える関係性にしたいなと思いました。

 

■「青春恋愛映画の名手」と言われている三木監督ですが、今回映像化するにあたり一番意識したポイントはどこになりますか?

最初に永瀬(廉)くんと出口(夏希)さんに話したのは「人が幸せかどうかは人生の長さで決まるわけでないと思うし、いかに生きたかということ」です。人が生きるモチベーションは自分の中から湧き上がるものだけではなくて人から与えられるものじゃないかと思っていて、秋人は春奈のために生きるということで生きる希望を見出していくので、その瞬間はすごく幸せだったと思うし、それを感じた春奈もすごく幸せだったんじゃないのかなと思います。結果的に想いは後から伝わるんですけど、僕が原作を読んだときに感じた “この二人の純粋な思いは素敵だな”という部分が視聴者の皆さんに伝わればいいなと思いました。

 

 

■色彩もカラフルで映像がすごく綺麗に感じたのですが、何かこだわった点などありますか?

2人が絵を描くキャラクターなので、本人たちが描く絵はもちろんですけど、画面全体から色彩が溢れている感じが見えるように意識しました。病院のシーンは冷たい絵にならないように、屋上のシーンではグリーンを入れてみたり、春奈の病室も彼女の小さな世界に見えるように美術さんと話をして部屋の飾りを作っていただきました。

 

■作品の多くは登場人物のどちらかが病気になったり、余命宣告を受けているケースが多いですが、本作は主人公のどちらも余命宣告を受ける<期限付きの恋>ですね。だからこそ描けた部分もありましたか?

命の短さをわかっているからこそ“思いの瞬間最大火力”じゃないですけど、先を考えずに思いを全部出して思いのままにまっすぐ進むということが秋人はできたと思うし、それを2人の友人である綾香が見て“この2人が羨ましいな”と思う部分だと思います。余命宣告を受けていなくても秋人や春奈のような生き方ができれば人生が豊かになると思うので、観ている方には綾香目線でそれを感じてもらえたらと思います。僕自身も撮影しているときは登場人物の中で言えば綾香目線で2人を見ていたし、最後に思いを託されるのも綾香なのでそこを大事に作りました。

 

 

■主演の永瀬廉さん、出口夏希さんは本作で初めてお仕事されたと思うのですが、何か印象に残っていることはありますか?

永瀬くんはパプリックイメージだとクールでミステリアスな印象があったんですけど、本人と話すと気のいい関西の兄ちゃんで、お芝居で見せる表情と本人のギャップが面白いなと思いました。秋人が余命宣告をされて人生を諦めた空気感から春奈と出会って生きる希望を見出していく中で、最初のどこか憂いを帯びた感じからスタートするところが永瀬くんの雰囲気に合っていたと思います。「春奈の方が外界から遮断されて生きてきたのでどこか幼さもありつつ思いの純粋さでいうとプラトニックな2人。その感じを大事にして相手を思うが故に自分の思いを伏せてしまう、彼女を最優先に行動することを意識してほしい」ということを永瀬くんには話しました。原作を読んだときも思いを言っちゃえばいいのに…と思ったんですけど、そこを言わないのが思春期の青臭さでもあるし、言わない尊さみたいなのが秋人のキャタクターだなと思います。もどかしいんですけどね…。出口さんは小動物のようで見ていて飽きないですね、画面の中にいると常に目で追っちゃうような。出口さんと話したのは、「余命半年ではあるけど、そういう設定を背負い込みすぎずに、その瞬間を眩しく生きている女の子にしてほしい」ということ。お芝居もあまり作り込みせず、その場で感じたことや秋人に声をかけられたらどう反応するか、その場のセッションを大事に作っていこうという話をしました。彼女は自然なリアクションが素敵で、お芝居なんだけどちゃんと心が動いているように見える女優さんなので、そこを丁寧に表現していくのが今回のテーマだったと思います。

 

■他のキャストで印象に残った方や印象に残ったことはありますか?

親世代が見たときに、自分が親で自分の子供が余命宣告をされている状況だったとしたらすごく考えると思うんですよね。松雪(泰子)さんが春奈の母親として本当はめちゃくちゃ心配だし、すぐにでも感情を出したいけどそこは出さないという抑制的なお芝居で上手に見せてくれました。葬儀場のシーンで顔が見えない状態で秋人を抱きしめたときに、一瞬だけ表情がわかるシーンがあるんですけど、最初に松雪さんと「どこで彼女の感情が出るんですかね?」と話をしたときに「途中途中で感情を出すのではなく、そこの1点だけかな」と話をされていて、僕も「なるほど」って納得したんですけど、あのシーンの表情は計算されていて本当に素晴らしいなと思いました。秋人の妹を演じた月島(琉衣)さんはお兄ちゃんの余命を知らない設定だったので、知らない明るさを出してくれて。普段は無垢なんですけど、ふと悲しい表情をした時に心を掴まれる感じもありました。実は主題歌「若者のすべて」のMVを作品とは全く違う世界観で豊嶋花さんと月島さんで撮影したんですけど、すごく素敵な映像に仕上がったのでぜひこちらも注目してほしいですね。

 

 

■音楽は亀田誠治さんが担当されていましたが、『若者のすべて』や曲中の楽曲など作品にぴったり合っていましたが、音楽にもこだわられましたか?

新たに作るのではなくて「みんなが知っている思いを乗せられる楽曲をモチーフにしたいね」という話が最初からあって、いろんな楽曲の候補が出た中でプロデューサーからフジファブリックの「若者のすべて」を提案してもらいました。僕もすごく好きな曲で、ヨルシカのsuis(スイ)ちゃんにカバーしてもらっているんですけど、志村さんが亡くなられた後もみんなが歌い繋げてきたという部分と、秋人と春奈の2人の思いをその先に生きていく人が引き継いでいく部分と同じだなと思う側面があって「これだ!」と思いました。この曲は夏の終わりの切なさを歌っているんですけど、僕はむしろ今この瞬間のエモーションを大切にしたいという曲の持っているポジティブなメッセージを2人の距離が近づいていくシーンで流したいという意図があって、この映画の切なさより力強さを表すことができたと思いました。

 

■以前に監督された『今夜、世界からこの恋が消えても』は、まず日本で公開されて韓国など海外で上映されヒットされた形だと思いますが、今作はNetflixということで全世界のみなさんが同時期に配信で作品を楽しんでもらえる環境ですが、その辺りは何か意識されますか?

すぐに反応が見られるので楽しみでもありますし、不安でもあるんですけど、同時配信で見てもらえるのはやっぱり嬉しいですしワクワクします。どんな反応なのか楽しみなのでちゃんとエゴサして、翻訳してチェックしたいと思います(笑)。『セカコイ』は韓国にはないラブストーリーだったので“日式ラブストーリー”と言われて受け入れてもらったみたいなところがあって、海外を意識して作ったわけでもない作品が海外でも多くの方に観てもらえるのはすごく嬉しいなと思いました。今回もまずは日本のお客さんが楽しめる良いものを作ろうと思ってスタートしたんですけど、日本の作品の良さ・面白さが海外の方にも伝わればすごく素敵だと思います。

 

■最後になりますが、作品をどう楽しんでほしいですか?

2人に背中を押してもらえるような作品にできたらと考えて作ったので、明日を生きていく視聴者の皆さんにちょっとだけでも2人の思いの強さが伝わって、日々の生き方に対してどうやったら輝く毎日を作れるのかと考えてもらえたら嬉しいです。

 

 

<作品紹介>

『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』

Netflixにて世界独占配信中

Netflix作品ページ:https://www.netflix.com/よめぼく

 

<あらすじ>

美術の才能に溢れ、二科展の入選を目指していた早坂秋人(永瀬廉)は、心臓に腫瘍がみつかり余命一年を宣告される。感情を押し殺しながら、毎日を淡々とやり過ごしていたある日、病院の屋上で絵を描く桜井春奈(出口夏希)と出会う。自分が描いた美しい絵を、「天国。もうすぐ私が行くところ」とつぶやき、初対面の人間に「あと半年の命」とさらりと言う春奈に、秋人は次第に心惹かれていく。春奈には自分の病を隠し続け、大切な人のために必死になることで、秋人の残された無機質な時間に彩りが生まれていくー。

 

<suis from ヨルシカ 「若者のすべて」 Music Video>

 

<プロフィール>

三木孝浩(ミキタカヒロ)

2000年よりミュージックビデオの監督をスタートし、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005/最優秀ビデオ賞、カンヌ国際広告祭2009/メディア部門金賞などを受賞。 2010年、映画『ソラニン』で長編監督デビュー。

代表作は『僕等がいた』(2012)、『陽だまりの彼女』(2013)、『ホットロード』(2014)、『くちびるに歌を』(2015)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)、『きみの瞳が問いかけている』(2020)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022)、『TANG タング』(2022)、『アキラとあきら』(2022)、Amazon Original ドラマ『僕の愛しい妖怪ガールフレンド』(2024)など

 

HM:小林雄美/TAKEHARU KOBAYASHI
STY:内田あゆみ(creative GUILD)