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松ケ迫美貴

【脚本家・松ケ迫美貴インタビュー】ドラマ『コールミー・バイ・ノーネーム』脚本を担当!

人生で出会ってよかった小説No.1とも名高い斜線堂有紀の金字塔『コールミー・バイ・ノーネーム』が待望の実写ドラマ化。本作の脚本を担当するのは連続ドラマ脚本デビューとなる松ケ迫美貴。脚本家デビューのきっかけや『コールミー・バイ・ノーネーム』への思いを聞いた。

 

■脚本家を目指したきっかけを教えてください!

初めて脚本を書いたのが、2021年の新人シナリオコンクールでした。その時は「脚本家になりたい」と思ってやっていたわけではなくて、あくまで趣味の創作活動の一環として書いていました。ただ、コンクールの最終審査に残ったことがきっかけで事務所の方に声をかけていただき、スターダスト所属の脚本家になったことで、“こんなトントン拍子に進むことってなかなかないから思い切って飛び込んでみよう”と思って、それまで勤めていた会社を辞めて脚本家一本に絞りました。もともと幼い頃から物語を書くことが好きで、小学生の頃からノートに自作の小説を書いているような子どもでした。大学生までは小説を書いていたのですが、社会人になってからは忙しくて全然書けてなくて。コロナ禍などを通して、少し自由に使える時間が増えたことがきっかけで、「よし、何か書いてみよう」と思ってリハビリ感覚で手を出したのが脚本でした。10年くらいのスパンが空いてもまたこうして書くことに戻ってきたということは、きっとこの道が一番自分に向いているんだろうなと今は思っています。

 

■脚本家としての喜びや楽しさはどういうときに一番感じますか?

オリジナルの作品を書く時は、いくつかの印象的なシーンが思い浮かんで、それを繋げてストーリーを作る…というような工程で書いています。なので、バラバラだったシーンが自分の中で1つストーリーに繋がって形になっていく時が一番楽しいですね。「ああ、このシーンってこういう意味だったんだ」って自分で後からシーンの意味に気づいたり、自分で自分の物語に救われたりします。また、脚本家の場合は、自分で作ったストーリーを映像にしていただけるので、その完成形を見た時にきっと一番の喜びを感じるんじゃないかなと思います。なので、今から『コールミー・バイ・ノーネーム』のドラマを見るのがすごく楽しみです!

 

■逆に大変なことはありますか?

脚本は、映像としてどう表現されるかを意識しないといけないので、面白い物語を考えるだけではなくて、「みる・きく」がすごく重要なんだなと思いました。自分の頭の中では分かっていても、脚本に落とし込んだときに登場人物の感情が見えてこなかったり、セリフを声に出すとすごく白々しく感じてしまったり……。私はどうしても物語を考える時に小説寄りの文章ベースの考え方になっているので、映像を意識した思考癖をつけるように日々努力しています。

 

■デスクでじっと書いたりカフェで書いたり…と脚本を書く時のスタイルはそれぞれあると思いますが、松ケ迫さんはどういうスタイルで書かれていますか?

基本は家で書いていて、行き詰まったらカフェとかで書こうと思ってパソコンを持って出かけるんですけど……周りの音や隣の人がどんな話をしているのかが気になって結局書けないので「書けなかったな」という罪悪感を持って帰って家で書きます(笑)。私は一つの作品を書き終わるまで次の作品にうつりたくないタイプなので、とにかくスピード重視で一つ一つの作品を早めに仕上げて、Aの執筆、Bの執筆、Aの見直しと修正…と言う感じで進めています。別の作品を間に挟むことで、また新たな視点で物語をみることができるので、そういった点は利点だと思っています。

 

■以前は仕事を7年位されていたとのことですが、会社員としての経験が脚本執筆に役にたっていると思う部分はありますか?

自分のこだわりに囚われすぎずに「監督はこう撮りたいんだな」、「プロデューサーはここを狙っていきたいんだな」「でも視聴者が見たいのはこういう部分じゃないのかな」といろんな視点で物事を考えてバランスをとって進めていけるのは前職(広告代理店勤務)のおかげだと思っています。映像作品はチームで作っていくものだと思っているので、常に周りへの感謝の気持ちや配慮を忘れずに仕事していきたいと思っています。

 

■事務所内にも同世代の脚本家のみなさんがいらっしゃいますが、松ケ迫さんにとってどんな存在ですか?

ばば(たくみ)くんとは以前から知り合いなのですが、彼は天才肌なので憧れの存在でもあります。事務所内のスタダクリエーターズの脚本家とはチームを組んで1つの作品に対して一緒に開発させていただく機会が多いのでいろんな意見を聞きながら進めていけるというのはすごく自分の成長にもつながりますし、心強い存在だなと思います。とてもありがたい環境です。

 

■脚本家の皆さんは仲間でもある一方、ライバルの存在でもあると思うのですが、松ケ迫さんはみなさんの活躍をすごく喜ばれているように見えるのですが…。

そうですね。知り合いの活躍は純粋にすごく嬉しいですし、心から応援しています!今は新人脚本家として同じ枠組の中で仕事をしているライバルではあるんですけど、色々経験をしていくうちにそれぞれ得意ジャンルや特色も出てくると思うので、違うジャンルでレベルアップして力強いチームになって一緒に戦えたらすごく良いなと思います。たまに事務所の食事会があるのですが、脚本家だけではなくて監督やアニメーターの方もいらっしゃるので「どんな仕事しているの?」とか「最近どんな映画見た?」とか情報共有をし合ったり、どういう風に仕事をしているのかを良く伺っています。

 

■休日はどのように過ごしていますか?

脚本家になってから時間を比較的自由に使えるようになったので、一人旅をする機会が増えました。遠出して温泉に入ったり、自然と触れ合ったり。美術館や博物館に行くのも好きなので、興味のある展示があれば見に行くようにしています。今は脚本家の仕事をこなすのに精一杯ですが、もう少し余裕が出てきたらまた小説を書きたいとも思っています。

 

 

■『コールミー・バイ・ノーネーム』は連続ドラマデビュー作になりますが、決まったときの感想を教えてください!

「デビュー作でいきなりメインライター、しかも連ドラ!?」という衝撃がすごくて最初はただびっくりしていました。実は、自分自身が初めて書いた脚本である『白い光』でも女性同士の同性愛を扱っていて。今回連ドラデビュー作の『コールミー・バイ・ノーネーム』で、改めてGL作品に挑戦できることに運命的なものを感じましたし、「絶対に良い作品にするし、これを代表作にするぞ!」という強い気持ちでのぞみました。個人的に、同性愛を扱うジャンルとしてBL作品は人気ドラマも多く世間的な認知度も高いと思うのですが、GL作品はまだまだこれから盛り上げていける分野だと思っていて。なので、今回の作品を通してGLというジャンルがもっと注目されたら嬉しいなという気持ちもありました。

 

■原作がある作品の脚本を書く楽しさや逆に難しさはどういう部分だと思いますか?

映像にするのってこんなに難しいんだと思いました。たとえば小説であれば喫茶店でずっと話しているだけでも問題はないんですけど、映像になると動きをつけなくてはいけないので色々なシーンを足す、もしくは動きのないシーンをなるべくコンパクトにするという調整が必要だったので取捨選択をしていく作業がすごく大変でした。ただ捨てる作業があるからこそ拾う作業もあって、原作の中ですごく印象的な台詞を“こういう場所でこういう動きをつけて撮ったら綺麗なんじゃないか”というのを監督やプロデューサーと相談しながら脚本に落とし込んで。原作に映像をつけていく作業がすごくワクワクしたので、それは原作がある作品ならではだと思いました。

 

■『コールミー・バイ・ノーネーム』は学生時代のちょっと特殊な恋愛を描いていますが、どんなところを意識して書かれましたか?

そうですね、まず気をつけていたのは原作が2019年の出版で今回映像化されるのが2025年と6年の間があって、その間に原作で取り扱われているすごく大事な法律が改正されていたり、同性愛を扱った作品なのですがセクシャルマイノリティに対する世間の認識や、当事者の意識・周囲の反応もここ数年ですごく変わっていると思っていて。そういった部分を『時代に合わせる』ことを意識して書きました。原作者の斜線堂先生にも直接ご挨拶させていただいて、事前に原作から変わる部分をお伝えして、ご理解いただいたうえで変更させていただきました。

 

■ドラマのオンエアを控えている今の心境を教えてください!

素直にめちゃくちゃ楽しみです!(笑)枝(優花)監督が映すビジュアルや世界観がすごく素敵で大好きなので、一緒に作り上げた『コールミー・バイ・ノーネーム』という物語をどういう映像にしてくださるのかをすごく楽しみにしています。

 

■最後にコールミー・バイ・ノーネーム』の見どころを教えてください!

『コールミー・バイ・ノーネーム』は、出会うべくして出会った二人が、『名前』という宿命に立ち向かおうとする話です。まっすぐに追い求める愛と、近づけば離れていく琴葉という正反対の二人がどうなっていくのかーー、“名前当てゲーム”から始まる愛と琴葉の切ない恋模様をぜひお楽しみください!

 

<作品紹介>

MBSドラマ・ドラマフィル『コールミー・バイ・ノーネーム』

MBS/毎週木曜2529分~

テレビ神奈川/毎週木曜25時~

テレビ埼玉/毎週月曜24時~

群馬テレビ/毎週火曜2430分~

とちぎテレビ/毎週水曜25時~

チバテレビ/毎週木曜23時~

 

<あらすじ>

英知大学に通う世次愛(よつぎ・めぐみ)は、ゴミ捨て場に捨てられていた美しい女古橋琴葉(ふるはし・ことは)と出会う。掴み所の無い琴葉と友人になりたいと思う愛だったが、その提案はすげなく拒否されてしまった。そんな琴葉が代わりに提案してきたのは、友人ではなく「恋人」になること。そして、仮初めの交際の中で彼女の改名前の名前を当てられたら「友人」になるという奇妙な賭けだった。後に引けずその賭けに乗ることになった愛は、琴葉と「恋人」としてぎこちなくも関係を深めていくが、彼女の名前に隠された過去が現在に牙を剥くようになりーー。絶対に幸せを諦めない女と、近づけば離れていく女を巡る、新感覚・名前当てガールズラブストーリー。

 

<プロフィール>

松ケ迫美貴(マツガサコミキ)

1992年1120日、福岡県出身

学生時代から物語を書く事に興味を持ち、高校在学中に執筆した小説『イノセント・ブルー』が全国高等学校文芸コンクールで最優秀賞・文部科学大臣賞を受賞。以降も多数の小説コンクールで優秀作品に選出され、第33回新人シナリオコンクールでは特別賞 大伴昌司賞 佳作を受賞。

 

【受賞歴】

■全国高等学校文芸コンクール 最優秀賞・文部科学大臣賞 『イノセント・ブルー』

■明治大学文学賞 倉橋由美子文芸賞 『リリス・ピンク』

■第8回ブックアワード 優秀作品 『あっても、なくても』『名に恥じぬ人生。』『走れ、お前はメロスではない』

■第31回新人シナリオコンクール ファイナリスト 『白いヒカリ』

■第32回新人シナリオコンクール ファイナリスト 『愛であれ』

■第33回新人シナリオコンクール 特別賞 大伴昌司賞 佳作 『奇形のラスカ』