【三木孝浩監督インタビュー】監督作品『知らないカノジョ』2月28日(金)全国公開!
2021年に公開されたフランス映画『ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから』(原題:Mon Inconnue)を原作とした映画『知らないカノジョ』が2月28日(金)に公開される。本作を監督するのは三木孝浩。恋に落ちてから8年、喧嘩した翌朝、二人の出会わなかった世界が始まる、という最高のファンタジック・ラブストーリー。三木監督に本作への想いや制作秘話を聞いた。
■本作はフランス映画『ラブ・セカンド・サイト』を現代の日本ならではの舞台やキャラクターにリメイクされたとのことですが、最初に脚本を読まれた時はどういう印象でしたか?
実は企画段階でGAGAのプロデューサーの方から「映画『ラブ・セカンド・サイト』をリメイクした作品を作りたいんですけど・・」という話を頂いて、僕の好きなファンタジックラブストーリーだったので「日本版にするならこういう感じがいいんじゃないですかね?」と話をしながら脚本家の登米(裕一)さん達と作り上げていきました。ヒロインをシンガーソングライターにさせてもらったり、友情関係の部分に厚みを加えてもらったり…というのを僕の方から提案させてもらいました。
■友情関係のシーンに厚みを加えられたとのことですが、他に何かこだわられたシーンはありますか?
オリジナルの最初に登場する点描シーンがすごく好きだったので、日本版でもそこは逃げずに描きたいなと思いました。日本の映画で点描シーンをすごく丁寧に描く作品はあまりないと思うんですけど2人の物語を短い時間で観客に伝えたいと思ったのですごくこだわりました。
■中島健人さんが「10年以上憧れだった三木監督とこのタイミングで仕事をご一緒できることが本当に嬉しいです」とおっしゃっていて、監督も10年以上前からご存じでいつか一緒にお仕事してみたいと思い続けられていたとのことですが、実際一緒に作品を作られていかがでしたか?
健人くんはすごく頭が良くてこちらの指示に対して的確な対応だったので本当にやりやすかったです。パプリックイメージ的にはアイドルとしてのカッコ良さ、“ザ・ケンティ”みたいな美しさを表現できるのはわかっているんですけど、そうでない人間味のある情けなさも曝け出せる役者として今回は存在してほしいなという思いがあって、“みんなに見せたことがないけどできるだろう”と期待を込めて健人くんにオファーをしました。
■milet(ミレイ)さんは普段アーティスト活動をされていて今回初のお芝居ということでしたが、初芝居とは思えない素晴らしい演技でしたね。
本当にびっくりですよ。僕もお芝居をしたところを見たことがなかったので「興味ありますか?」からのスタートだったんですけど、興味を持ってくれて。お互いに芝居ができるのかという不安があったので「1年かけてレッスンしましょう」と始まり、そうしたら本当に勘が良くてレッスン1日目で「いけるんじゃない!」という確信がありました。感情を内側から出すということはアーティストのmiletとして自分の歌の中で表現されていますが、それをお芝居でもできる人とできない人がいると思うんです。miletはチャンネルを変えればすぐにできたので現場では女優miletとして接していましたね。元々彼女の素がキュートなキャタクターで、ライブを見に行った時に歌っている姿はミステリアスなのにMCで話しているときはすごく可愛らしくてそこがミナミっぽいなと思う瞬間がありました。みんなmiletのお芝居を見てびっくりすると思います。
■友情のシーンにこだわられたという話の通り、桐谷健太さん演じる梶原が中島さん演じるリクにとって大きな存在になったのでは思いますが、監督からのお芝居のリクエストはあったのでしょうか?
“腐れ縁の仲良い関係だけど実は献身的な愛情を持っている”という梶原の裏側を感じさせない方が良いなと思っていたので、そこは桐谷くんと話をしました。リクが別の世界に来て“てんやわんや”している中で梶原がリクの言っていることにちょっと乗っかって手伝ってあげる、リクとその世界を繋いでくれるキャラクターにならなくてはいけない難しい役どころですが、その塩梅を桐谷くんが上手く演じてくれたと思います。
■他に作品中で特に印象に残っているシーンはありますか?
一番大事にしていたのはレストランのシーンです。そのシーンでミナミの言葉がリクの心に刺さって響く、そしてその表情が見ているお客さんにも同じように感じ取ってくれたらいいなと思っていたのでクランクインする前に「そこまでに至る感情の流れを大事にして欲しい」と健人くんにも伝えて、一番こだわって撮影したシーンです。
■風吹ジュンさんが演じられたミナミの祖母・前園和江もこの物語のキーパーソンの一人になると思いますが、どういうイメージで演出されたのでしょうか?
見ている人が「本当なのかな?どっちなのかな?」と思うようにしておきたい部分があって、本当だろうが妄想だろうが風吹さんならリクの心に響くセリフを話す和江を演じてもらえるという期待感があり、本当に素敵に演じていただきました。
■本作は2作品ぶりの劇場公開作品となり、記念すべき20作目となりますがいかがでしょうか?
そうですね、記念すべき20作目ですね。ライブシーンを本当にライブに行った気分で楽しんでもらうには小さい画面では伝わらない部分もあるので、大きなスクリーンで良い音響設備で見て聞いてもらえる劇場公開用の作品として撮れたことは本当に良かったと思います。
■ライブシーンは多くのMVを手掛けられた監督ならではのこだわりもあるのでしょうか?
アーティストmiletとしてのポテンシャルに期待した部分で言うと、ストリートライブのシーンはプレイバックではなくて同録でクリックなしで歌っているので編集はなかなか難しいかなと思ったんですけど、彼女の生の感情を活かしたかったのでその場で撮影をしました。miletだからできたシーンかなと思います。
■監督もリクのように違う運命の転換期に立つとしたらいつの分岐点にたってみたいですか?
前職を辞めなかったら今どうなっているんだろうって想像したことはあります。映画をやりたいと思って1年くらいどうしようと考えていた時期があったので、そのままだったら映画監督は諦めて今もずっとミュージックビデオの監督をしているのかなとは思います。もちろん後悔はないですけど。僕もいろんな映画を見ながら自分の人生を振り返る瞬間があって、きっかけがないとそういうことがないと思うので、この作品を観てそういう時間を作って欲しいですし、この作品がスイッチとして機能してくれればいいなと思います。
■作品が今まで自分が当たり前に接してきた相手に対しても考えるきっかけにもなりますね。
そうなんですよ。身近な人に対して「ある種馴れ合いだと思っていたけど、相手はそう思っていないかもしれない。相手に気持ちを向けていれば気づけたことがあるかもしれない」というちょっと身につまされることもあるので、だからこそレストランのシーンにこだわりました。見ている人がリアルな世界に戻った時にこの映画が“今後の未来をどう過ごすべきなのか”を見直す良いきっかけになればいいなと思います。
■最後に作品の見どころを教えてください!
リクとミナミが本当に素敵なカップルだし、2人の相性も本当に良かったのでそこが見どころだと思います。あとミナミの作った音楽を軸にラブストーリーが進んでいくんですけど、スタッフもデモがあがってきた時に「この曲がラストに聴けるんだ」ってすごくモチベーションがあがった本当に素晴らしい楽曲になっています。ちゃんとミナミとしてどストレートに思いを伝える歌詞やメロディになっていて、でもちゃんとmiletの曲でもあるというところが本当に素晴らしくて。ぜひ楽曲にも注目してみていただきたいです。
<作品紹介>
映画『知らないカノジョ』
2025年2月28日(金)全国ロードショー
<あらすじ>
大学時代に出会い、お互い一目惚れして結婚した<リク>と<ミナミ>。それから8年、小説家を目指していたリクは、ミュージシャンの夢を諦めたミナミのサポートのかいもあり、一気に人気のベストセラー作家となった。全てがうまくいっている、そう思っていた。
ところが、ある朝リクが目を覚ますとミナミの姿はなく、出版社に打ち合わせに行くも出会う人々と全く話がかみ合わないことに戸惑いを覚える。なんと人気作家だったはずの自分は文芸誌の一編集部員になっており、街には天才ミュージシャンとして活躍する、自分とは知り合ってもいない“前園ミナミ”の姿と曲が溢れていた――。
キャスト:
中島健人 milet 桐谷健太 中村ゆりか 八嶋智人 円井わん / 眞島秀和 風吹ジュン
<プロフィール>
三木孝浩(ミキタカヒロ)
2000年よりミュージックビデオの監督をスタートし、MTV VIDEO MUSIC AWARDS JAPAN 2005/最優秀ビデオ賞、カンヌ国際広告祭2009/メディア部門金賞などを受賞。 2010年、映画『ソラニン』で長編監督デビュー。代表作は『僕等がいた 前篇・後篇』(2012)、『陽だまりの彼女』(2013)、『ホットロード』(2014)、『くちびるに歌を』(2015)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)、『思い、思われ、ふり、ふられ』(2020)、『きみの瞳が問いかけている』(2020)、『今夜、世界からこの恋が消えても』(2022)、『TANG タング』(2022)、『アキラとあきら』(2022)、Netflix映画『余命一年の僕が、余命半年の君と出会った話。』(2024)など