市原隼人 映画「劇場版 おいしい給食 Final Battle」絶賛公開中!
市原隼人主演映画「劇場版 おいしい給食 Final Battle」が絶賛公開中。この度、市原が役へのアプローチを語った。
同作は、給食マニアの教師・甘利田幸男と、給食マニアの生徒・神野ゴウによる、どちらが給食を「おいしく食べるか」という闘いを描く学園グルメコメディ。1980年代のある中学校を舞台に、甘利田と彼を取り巻く生徒たち、大人たちのさまざまな人生模様が、食欲をそそる給食バトルと共に紡がれる。
1984年。給食マニアの教師・甘利田幸男(市原)に衝撃が。なんと、学校から給食が無くなるというのだ!!「どちらがよりおいしく給食を食べるか」という超絶給食バトルを甘利田と繰り広げている生徒の神野ゴウ(佐藤大志)は、【給食改革】を目指し、生徒会選挙に出馬すると高らかに宣言。そんな2人を見守る新人教師の御園ひとみ(武田玲奈さん)の心労は果てしない…。給食一筋ウン十年。甘利田は愛する給食を守るため、史上最大の給食バトルに打ってでる!
――昨年、ドラマ版が放送されました。とても評判がいいですね。
「身近な人たちからも面白いと言っていただいて・・・。別の現場のプロデューサーの子供さんもファンだったらしくて、初めて自分の職業を理解してもらえたと喜んでいました(笑)。」
――甘利田先生がはまり役です。1984年が舞台の作品で、今の時代にはあまりいなそうな先生ですね。
「今は彼のような行動が良しとされない時代ですが、フェイストゥフェイスでしっかりと向き合って伝わるまで言い続ける環境の大切さや、地域で子供を育てていく感覚が伝わるといいなと思います。」
――市原さん自身が生徒だったら、甘利田のどんなところが好きですか?
「生徒のために、彼はいろんなリスクを背負ってくれていると思います。決して押し付けではなく、生徒たちにも自由と余裕を持たせて考える時間を与えながら向き合う。本当に生徒のことを考えている先生だと思います。それも、彼自身がいろんな苦しみや悲しみを経ているからなのかなと。だから、御園先生が迷ったり落ち込んだりしているときも、教師としての的確な言葉がぽろっと出てくる。結局は給食愛が一番に出てきてしまいますが(笑)。」
――綾部監督にお話を伺った際、最初はあれほどのオーバーアクトなキャラクターではなかったと聞きました。クランクイン前の本読みのとき、市原さんが今の甘利田のテイストでやってみせたところから、いいんじゃないかとなったと。
「自分でもすごく迷っていたんです。本読みでみなさんに初めてお会いするときにも、どういったアプローチをしていったらいいだろうと考えていました。脚本の時点で面白いものが出来上がっていたので。でもまだそこにキャラクターを作れる余白も感じました。この作品には、エンターテインメントとしてストレスがなく、ある意味教育番組のような見やすさがあります。でも設定はすごくしっかりしている。そこにキャラクターがハマるともっと面白くなるんじゃないかと思いました。」
――そこで悩みぬいた。
「はい。繊細で細かい芝居にするのか、自然体の芝居にするのか、それともコメディに振り切ってオーバーにやってみるのか。ギリギリまで悩みました。本読みの際にはオーバーな形でやってみましたが、クランクイン前日の監督との電話の段階でもまだ悩んでいました。結局、行ききるところまでやってみましょうとなりました。ただ、しっかり時間を使って、抑えるところはしっかり抑えていきましょうと。」
――普段の甘利田は“静”ですからね。だからこそ余計に給食のテンションが際立つ。市原さんのあの演技がなかったら、まったく別のキャラクターになっていたと思います。あのキャラクターだからこそ、こちらもワクワクしながら見てしまう。
「滑稽で笑ってしまいますよね(笑)。でも甘利田自身にとっては、神野ゴウとの戦いは毎回真剣で、負けると悲劇なんです。本人にとって悲劇であればあるほど、俯瞰で見ると喜劇になる。そんな環境とキャラクターを作ることができたので、自分としても安心して撮影することができました。」
――監督は、ドラマ版撮影の最中から「これはイケる!」と感じていたそうです。市原さん自身も、いいキャラクターが生まれていると感じていましたか?
「感じましたね。映画は総合芸術と言われますが、ドラマ版も含め、スタッフや監督たち全員を信頼しないと、あそこまで振り切ることはできなかったと思います。やるからには、これまで見たことのないような作品を作りたかった。僕が小さなころから見てきた映画というものには、誰かが迷っていたり悲しんでいたりといった、普段、他人には見せないような姿を見られました。それが醍醐味のひとつでもあると思うんです。なので、甘利田がすべてをさらけ出して強引にぶん回すことが、『おいしい給食』の楽しみのひとつになればいいなと考えていました。」
――ナレーションも抜群です。
「現場で監督が乗せるのが上手いんです。常に笑ってくれて。決して勢いをつぶさないように、乗っている環境を崩さないようにしようと考えてくださっていたそうです。監督のデカい笑い声にすごく救われました。」
――ただ、強烈なキャラクターというのは飽きる恐れもありますね。
「それが懸念でした。やりすぎて自己満足になってパターン化してはまずいなと。常に緩急やメリハリをつけて、面白いポイントを作らないと飽きてしまう。決して一本調子にはならないように。難しい役でした。」
――メガネやパッツンパッツンのスラックスなど、身に着けているアイテムも印象的です。
「その辺もギリギリまで悩みました。甘利田の表情を見せたかったので、常にメガネをしているともったいない。では給食を食べるときだけ取るのはどうだろうとなって素晴らしいアイデアだと思いました。給食を前にして、メガネを取ると自分の世界に入り、彼の本能というか、心の声が出てくる。そして食べ終わり、メガネをかけることでまた教師になる。でもなかなかイメージに合うメガネが見つからなかったんです。結局、メイキングを撮影していたスタッフのメガネをちょっと貸してとかけてみたらフィットして。「いいじゃないか」と(笑)。」
――そうなんですね!
「最初の衣装合わせではしっくりこなくて、もう一度合わせたいとお願いしたときにいろいろ持ち寄っていただいただいたんです。時計にしてもおしゃれすぎたり、個性が強すぎたりとイメージに合うものがなくて、ちょうど助監督がいい時計をつけてたんです。「おじいちゃんの時計です」と。それでお借りたらよくて。ネクタイもリアルにその時代のものを持っていたプロデューサーのものを借りたりしました。水色のパッツパツのスラックスもあとで持ち寄っていただいたときのものです。強さも柔らかさも両方だせていいなと。」
――ひとつひとつがハマって甘利田が出来ていったんですね。キャラクターや世界観はドラマ版で出来ていたと思いますが、映画版の脚本ではまず何を感じましたか?
「甘利田は自分の本当の声をナレーションで表現していきますが、映画ではゴウも声での表現があっていいなと思いました。ゴウの場合はアナウンスですが。あのシーンが脚本のときから良いシーンになると想像できました。あとはゴウが悔しくて感情をあふれ出す場面があるんです。廊下で涙ぐみながら訴えかけるところで、そこでゴウは、(演じている)大志はどんな表情をするんだろうと思いました。この作品でいろんなものと向き合ってきた結果、どんな表情をするのか。そこがすごく楽しみでしたね。」
――甘利田とゴウくんの絆が印象的な作品ですが、市原さん自身も、ゴウくん、そして佐藤大志くんのことが頭にあったんですね。廊下でのシーンですが、実際の撮影ではいかがでしたか?
「とても良かったです。最初、出来なかったのですが、ちょっと大志と話しまして。そのあと、すごくいい表情が出たので、自分も涙が出そうになりました。」
――本当に絆が生まれていたんですね。
「そうですね。ゴウとも大志とも。ずっと同じものに向き合ってきたので、神野ゴウと甘利田のような感覚を、僕と大志も味わえていたと思います。あと映画版のことでいうと、撮影に入る目に、監督に「ちょっと違うスイッチを入れます」とお伝えしました。「全部やりたいことをやりましょう」とも。監督との信頼関係もより深まっていたので、どんどん追求できると思ったんです。芝居というのは、監督とどう向き合うかというのもすごく大切なんだということを実感させてもらった作品でもあります。」
――ステキなお話です。ところで中学生とのお芝居という点はいかがでしたか?
「楽しかったです。新鮮でした。完全に無垢ですから。甘利田の芝居も、ゴウによって変わりますし。生徒みんなすぐに吸収して違う空気を出してくるので、勝てないなと思いましたね。独特な教師ですので、生徒との距離感も難しくて、自然体の掛け合いはできませんでしたけど、でも純粋無垢な子供たちばかりで本当に楽しかったです。「先生、芝居うまいじゃん、やるじゃん」なんて言われてました(笑)。」
――先生といえば、武田玲奈さん演じる御園先生もステキでした。
「武田さん自身が、みんなが恋焦がれるステキな女性像という空気を持ってらっしゃると思うんです。そのイメージがそのまま御園先生に投影されているように感じました。そのうえで、教師という職を全うしようと努める姿と、そのなかで葛藤する姿を、決して前に出過ぎることなしに、華を添えて空気を作ってくださっていました。一緒にお芝居をさせていただいていて安心感がありました。」
――最後に映画版を楽しみにしている人にメッセージをお願いします。
「ドラマ版がいい滑走路になって、映画として出だしから上昇気流に乗れています。すべてがハプニングかのような面白さは変わらずに、キャラクターもきちんと存在しています。給食バトルで負けたときには、悔しくて自然と涙が出てきました。それくらいの域までたどり着けたのは、役者として、本当にこの作品の財産だと感じています。いけるところまで行ったなと。映画では、甘利田が生徒たちのために爆発したりといった、ドラマでは見せきれなかった姿を見せています。この映画をどう例えて伝えればいいのか悩みますが、とにかく僕自身にとって、なかなか出会うことのないキャラクターになったのは間違いありません。」
――私たちも甘利田をとても好きになりましたが、市原さんにとっても特別な存在になんですね。
「もうなかなか出ないと思います。僕だけの力ではなくて、みんなで作り上げた環境がそうさせてくれました。心から感謝しています。純粋に給食や食への知識も増えますし、そこに加えて、人が成長していく様を見られる作品です。それをお客さん自身の経験にしていただいて、その経験を持ってまた人と話してもらえたら。この作品が人と人をつなぐ架け橋になれることを、心から願っています。」
映画「劇場版 おいしい給食 Final Battle」は現在、ユナイテッド・シネマ豊洲ほか全国で公開中。